お前たちが望むのなら、私は何度でも告げよう。
この国は必ずや、砂塵へと還るだろう。
これがこの国の辿るただ一つの軌跡。
神たる私にも、変えられぬ。







































砂上聖譚曲
[Oratorio of Surface on the sand.]
Since 2003-2007
Tamamushi Presents


- overture -




































闇が、私を喰らっている。

血の様に、身内でどくどくと脈打ち、全身を侵蝕してゆく。
この身に巣くう闇を吐き出せれば、どんなにか楽だろう。
思わず闇の中に意識を手放しそうな甘い感覚が怖い。

「……愚かな」

闇が私を喰らっている。私もまた、この闇を喰らっていることに気付かぬに。
そうして私はまた眠る。

混濁した記憶も、病んだ身体も、欲しいのならくれてやろう。
しかし

「お前も道連れだよ、死神」





「それは、危険じゃよ、皇子。わしは、すすめませぬ」
「それでも、行かなければならないんだ」
「あの人だけは、助ける……絶対に!」



 とっさに固めた寄せ集めの覚悟。
 命の取り合いなど、今までの人生のサイクルの中において、組み込まれるはずがなかった要素。剣の扱いはしっていて、相手の急所を突く術も知っていた。
 けれど、実際に目の当たりにしたことはなかった。それでも四の五の言ってはいられない。
 考える前に身体が動いて、剣でもって生き延びたからには、俺はきっと剣で命を奪われるのだろう。
 剣を持つ者の業からは逃れられやしない。
 極限状態の中、そんなことをふと思った。



「私には分からないことが多すぎる」
 エメラルドの世界で。何故砂漠の真ん中で、こんなに緑が美しいのだろう。
「だから、全てを知りたい──私の犠牲で済むのなら、私は」
「誰も、失いたくない。……君を、失いたくないんだ」






































お前は、罪の子だね。
だがあるいは──それが、救いに転じるやも知れぬ
罪を罰す存在が罪を唆す
罪とは何だ
救いとは何だ
王国の命運、その重責がこの双肩にかかっている。
それだけは、わかる。

































「わたしはあの方を愛しているの」
 聡明な娘。罪を知っても尚、自分を貫こうとしている。
 でも、その選択は、間違いと言うしかなかった。
「例え、この想いが、神の意に背くことであっても」
 弱く、儚いばかりだと思っていた娘の、思わぬ強さ。
 だが、罪の重さは彼女を苛み、苦悩させた。自身の想いとに挟まれて、どちらも選べずに逝ってしまった。
 娘の笑顔より、死に際の白い顔が目に焼き付いている。
 罪を犯したのは、一体誰なのだろう。
 娘なのだろうか。それとも自分なのだろうか。
 しかし、人を想い、人を求めることの、何が罪なのだろう。
 ただ、祈るしかなかった。



「王国の復活には、貴方様が必要なのです」
「わかってないんだ」
「……俺がやろうとしてるのは、父親殺しだ。」
 


 紅い、赤い月。血塗られた如くに、赤く輝く満月。
「この国は、終わりよ!
 私の──私たちの罪を、神が放置なさるわけがないわ!」
 ふと、女が笑んだ。優しい花の様な笑み。昏い何かを捕らえた、恐ろしく真っ直ぐな双眸。
 握りしめられた手首が痛い。枯れた腕で、どうしてこんな力が出る。細面のたおやかな外見を裏切る様な強さ──それは狂っているように見えた。
 そして、小さくとも明瞭な声が耳朶を打つ。
「この国は、終わりよ」





























 ───嘘だ!!


























 指で髪を梳いて、腕を首に回す。暗い闇の中で、自分の存在が酷く小さくなったように感じた。
 息づかいが聞こえる程、傍にいる愛しい人。
 なのに、存在が大きくて──大きすぎて掴めない。夜そのものを、この身体で受け止めている様な。肌に触れる手は熱くて、でもモノに触れるような、その冷酷さ。

 知っているのだ。
 告げられなくても、この男はわたしのことなど愛していないと。
 いや、昔は愛されていたかもしれない。向けられていた瞳はもっと優しかった。

 知っているのだ。
 この男の中では、わたしの存在など欠片もないことを。

 歪んだ愛情。
 そうかもしれない。
 けれど、わたしはこの男を拒絶出来ない。

 その術を、わたしは知らない──















































全てを壊してでも、全てを壊すことになるとしても、俺はあの王国に戻らなければならない。
 そう決意して、今その王国を目の前にしてもまだ躊躇う俺自身がいる。

『壊したくない』『壊さなければならない』

 二つの正反対の気持ちを断ち切るように、剣の柄を握り、鞘から少しだけ引き抜いた。
わずかに耳に残る鞘走りの音。曇り一つ無い刀身を眺めて、呼吸をする。
 自分の気持ちを叱咤して、王宮の朽ちた色の門をくぐる。

 もう、躊躇うわけにはいかない。もう、迷うことは許されない。


 必ず、あの父王を……、神を、討つ。





































砂上聖譚曲 第一部 始動篇
Coming soon.
Please wait for a while.



































砂上聖譚曲 overture ......Date 03.4.30 07.6.24改訂

もうこれを書いてから四年も経つんですねー……。
時間の流れって、無情だ……。

というわけで久々に訂正を入れた予告編です。
やっぱり相変わらず暗くて重い話です。
未だに下書きをため込んでいるので、その内アップ出来ると良いなぁと思ってます。
ただ元ネタを考えたのが高校時分で、その分話の詰めの甘い所があって、要練り直しです。
とりあえず今ある長編を片付けてからになりそうです。

砂漠舞台は随分前から使いたかったんだなぁってことが、読み直して改めて感じました。
今書いてる長編も、沙漠出て来ますからね。

三つ子の魂百まで……。

ご拝読ありがとうございました。