... 唯の言葉はやがて唯一の言葉となる ...

2004/01/04〜2004/12/07までの気まぐれ詩in雑記


僕の頭蓋に詰まった限りない虚無妄想。 2004/12/07

僕の脳味噌に詰まった物を隠して
下らない表層意識で生活している。
いつだって僕は僕であるための自我、
そんなものを意識した覚えなど無いのに。
そのくせ人は
自己形成、個性の埋没を嘆いて教育の更新。
その全ては裏返し。
僕の脳味噌に詰まった物は下らないかい?
君から見ればそうかもしれないね。
でも結局人間の脳味噌の構造って、
皆同じなんだし。


猫の眼 2004/11/12

 私の名前はユキ。
 この家に住むようになって、一ヶ月経つ。もうここの家で三回目になる引っ越しをした。
 とはいえ、近所を転々としている様なものなので、この界隈には慣れ親しんでいる。もし私も知らない遠くにやられるようならば、暴れてでも拒否しようと思っていたが、そんなことにならずに済んで良かったと思う。
 私は近所でも評判な大人しい子なのである。争いごとはあまり好きじゃないし、第一そんなことで体力をすり減らすのは馬鹿らしいと考える方なのである。
 私が今住んでいるのはミヤナギさんという、以前住んでいたアオキさんの親戚の家で、歩いても一時間と掛からない場所にある。何故そんな近所に移り住む必要があるのか、私にはよく分からなかったけど、いろいろと都合があるらしい。誰も語ってはくれないし、訊くことも出来ない。となれば大人しく従うしかないのである。
 その実、私は飢え死にしない程度の生活知識があったから、自活しても良かったのだけど、どうしても連れて行こうとするものだから、あっさり折れた。
 友達のリコは既に自活歴5年になるけど、その前は家に住んでいたらしい。嫌になって家を飛び出た経歴の持ち主だけど、そのリコでさえ、養って貰う事を知っちゃうと、なかなか自活って難しいもんよ、と言っていた。
 私はそんなものかと頷いていたが、今になって何となくわかるような気がした。
 また新しい場所に移るのか、と思うと少し落ち込む。だけど、別に家の人と仲良くする必要はない。
 適当に話を合わせて、適当に近所を散歩して、適当に食べて、適当に眠る。
 その生活を、以前から続けていたその生活を、この家でするだけの事。そう変化はないだろう。
 私は正しく借りてきた猫なので、迷惑はかけはしない。どうせ私はすぐに、元の家に戻れるはずなのだから。


 私が元々住んでいた家は、アオキさんの甥であるトシユキの狭いアパートだった。
 トシユキは大学生で、私はいつも留守番だったけどそんなことが気にならないくらい彼が好きだったのである。トシユキはいつも私の頭を撫でてくれた。大きくて暖かい手で、それ以外何もなくても良かったくらい。
 そんな生活が二年もすると、トシユキは突然留守がちになって、私は一人取り残されることが多くなった。いつ帰ってくるのか気を揉みながら待っていると、やってきたのはアオキのおばさんで、私は彼女の所に時々訪ねるようになった。トシユキがそっちの方に行くのではないかと思ったからだ。
 アオキのおばさんは、私がトシユキを待っている事に気付いたのか、いつでも来て良いよと言ってくれた。
 そうしているうちに、私はアオキさんの家に厄介になることが多くなり、殆ど家族同然の扱いをされた。
 トシユキは滅多に帰って来なかったけど、それでも時々顔を出していて、帰ってくる度にユキ、と名前を呼んで撫でてくれた。もっと側に寄ろうとすると、彼は寂しそうに笑ってじゃあな、と帰っていく。
 今、トシユキが帰ってきたよ、とおばさんを振り返ってみたけれど、おばさんは妙な顔をして私を見ていたことを覚えている。
 そんな事が数度繰り返された後、別の家に移ることになった。そしてそこでもトシユキを見かけたけれど、みんなに気付かれないようにこっそり来てるのか、誰もそのことを知らないようだった。
 そして、今はミヤナギさんの家にいる。


 ユキ、と呼ばれて私ははっと目が覚めた。
 すぐ側にトシユキがいて、にこにこと笑っていた。そして、いつものようにゆっくりと何度も撫でてくれる。大きな手。ずっと変わらない優しい手。こんな風に撫でてくれる人はもう、トシユキ以外にはいなかった。
 もっと撫でて欲しくて、トシユキ、と名前を呼んだけれど彼に聞こえたかどうかは分からない。
 ふと、見上げた先で、トシユキの笑顔が少し曇った。帰るのだ、と思った。こういう笑顔の後、彼はすっと去ってしまう。しかし、珍しく彼は口を開いた。
 ユキ、もう少ししたら、一緒に暮らせるからね。
 その言葉は、ずっと言って欲しかった言葉だった。


 そしてまた、私はミヤナギさんの家から別の家に引っ越しをする。
 ミヤナギさんの家に居たのは僅か一ヶ月。前の家でさえ三ヶ月はいた。
 しかし、そろそろ私のこの生活も終わりを告げる。すぐに、私はトシユキとの生活が取り戻せるのだから。
 私は新しい家の人に、抱きかかえられていたけど、聞き間違いなどあり得ない人物の声を聞いて、ぱっとその方向を向いた。
 通りの向こうで、トシユキが手招きをしている。笑って、ユキおいで、と呼びかけている。
 私は身軽に腕の中から飛び出すと、彼に向かってまっすぐに走り出した。
 

 きゃぁぁぁぁっっ!
 辺りに悲鳴が響き、タイヤと道路の摩擦音が鋭く響いた。女性の腕に抱きかかえられていた白い猫が急に飛び出して、車に跳ねられたのだ。その猫は即死だった。
 この猫の飼い主は青樹咲子という女性が飼っていた猫だったが、今日友人に引き渡す予定だったという。その理由というのがおかしなもので、ユキ、と名付けられた猫には前の飼い主が見えるのだという。
 家族の誰にも懐かない猫なのに、誰もいない場所で誰かに甘えていたり、すり寄ったりしている姿が何度も目撃されていた。それ故に、気味が悪いと何度も飼い主が変わっていたのだった。
 最初の飼い主である安来壽之という青年は、青樹咲子が猫を引き取る二ヶ月前に交通事故で死亡しており、その遺品の整理に来た時に猫を飼っていたことを知り、育てるようになったのだそうである。
 安来青年は、この猫を生前大切にしていたようで、死して後もこの猫の元を訪ねていたのではないかと近頃では言われている。
 人の眼には見えない姿が、ユキという猫の眼には見えていたのだろう。


風追い人 2004/08/31

君遠く離れゆく 風に呼ばれ魅せられ 何処かへ
私の声はもう 聞こえまい
君の身体 魂 皆全て 風の声には及ぶまい
嗚呼 私は待とう 何時までも
君遠く離れゆく 風に誘われ囁かれ 何処かへ
私が出来うる一つの事
君のもたらす手紙に 多くの幸あらん事を
そう 私は待とう 此の場所で
君笑い手を振りゆく 船に乗り帆を張って
私が出来うる全ての事
君に笑顔返し 丘に咲く白い花束を
君遠く離れゆく 風に呼ばれ魅せられ 何処かへ
私の声はもう 届くまい
君の腕 足 皆全て 風を追うのに手一杯
君遠く離れゆく 風に誘われ囁かれ 何処かへ
私の声が届く頃 君は風を捕まえていて?
君の身体 魂 皆全て 全て 覚えている
嗚呼 私は待とう 何時までも
君遠く離れゆく 風に誘われ囁かれ 何処かへ
私が出来うる一つの事
そう 私は待とう 此の場所で
私が出来うる全ての事
君に笑顔返し 丘に咲く白い花束を
嗚呼 私は待とう 何時までも
君遠く離れゆく 何処かへ
そう 私は待とう 此の場所で
全て覚えているから 君も忘るるな
君に笑顔返し 丘に咲く白い花束を

イメージBGM「風追い人」
Presented by 遠来未来


低血圧 2004/08/08

嗚呼 何だって世の中は全部灰色
電車の揺れ並に快感だったら全部オッケーなのかしら?
そんなことより キミの笑顔一つ!
あたしにくれたって良いじゃない?
両眼に入ったうろこのコンタクトレンズ
色が入ってたって 少しも幸せにはなれないのよ
むしろ灰色の世界がさらに黒く成るじゃない?
世の人は偉大ね 色の三原色の法則
嗚呼 何だって世の中は全部インスタント
時間の節約=何でもテキパキだって思ってる?
そんなことより キミの笑い声一秒!
あたしに聞かせてくれたって良いじゃない?
両耳に聞こえる携帯電話の雑音
何かに操作されたみたいて 少しも安心できないのよ
むしろ灰色の世界がさらに味気なくなるじゃない?
世の人は偉大ね 直接の言葉こそ至上!
嗚呼 何だって世の中は全部灰色?
キミの笑顔 声 一分一秒!
それだけで世界はカラフルになるのよ
それこそがあたしのなかの至上!
……そう見えない?
じゃあ、その時は低血圧なだけ、です。


sospiro 2004/07/06

あなたの溜息
あたしの吐息
奏でる音は透明色
涙と雨が
絡む
日曜日の夜中に
さみしさと
とまどいとが
あたしの眼から
あなたの溜息より
青い色
奏でる音は憂鬱で
涙と雨が
絡んで
ぽつり
日曜日の夜中に


ringlet 2004/06/08

これは私の絆。
これは私の楔。
薬指には少し大きい。
これは私の枷。
これは私の罪。
貴方の意図は明瞭。
これは私の嘘。
これは私の無知。
もう、やめてよ。
愚かな私を嘲笑うのは。
これは私の贖罪。
いつか必ず叩きつけて返してやるわ。


始線 2004/05/18

君の言葉に甘えてばかりじゃ
僕は弱くなるばっかりです。
君は怒っているけれど
その姿を見たくなくて
逃げだそうとする僕がいます。
僕は、弱いかもしれません。
というか、
弱いと思います。
普段強がり言ってたりするけど
今この瞬間が、
どんなに不安で
どんなに泣きたいか
きっと君にはわからないと思います。
君の言葉に甘えてばかりの僕は
本当に至らないと思う。
今度君と向かい合った時には
君が笑ってくれるように、
と思いながら。
僕は今、荒野にいます。
前にも後にも道はありません。
だから走ろうと思います。時々休もうと思います。
君の言葉に甘えてばかりじゃ
僕は弱くなるばっかりです。
今やっと動き始めた僕を
じれったいと思っているでしょうが、
最後まで見守ってくれていることは知ってます。
だから今この瞬間に
ありがとうって
言いたいけれど、それはまた今度に。


向日葵 2004/05/10

ひとめ、ひとめぐり あなたを追って
一目見て 眩しさに くらり
ひとめ、ひまわり、ひとめぐり
真上の太陽 日時計は12時
ひとめ、ひとめぐり あなたを追って
人目気にして ひと目見る
日と目 気まずさに ちらり
ひとめ、ひとめ、ひとめぐり
傾きかけた太陽 日時計はもう
ひとめ、ひとめぐり あなたを追った
人目さけて 眩しさに くらり
ひとめ、ひとめぐる 向日葵は あたし


パンドラの箱 2004/01/29

いっそのこと
突き放してどこかへ消えてしまえ
そうしたら、
あたしはこの箱に鍵を掛けて
その鍵を海の底に沈めてやる
二度と開けないように
二度と開けたいとも思わないように
開けられなくしてやる
そうして時間を重ねても
やっぱり
少しだけひっぱり出てくる顔
忘れられるわけないじゃない
だったらいっそのこと
突き放して欲しかったのに
そうしたら、
この想い全部を箱に詰めて
鍵を掛けて
鍵を海の底に沈めてやる
二度と開けない
二度と開けるな
そう戒めて
開けても罪が有るだけだと
言い聞かせて
そうして、あたしは
鍵を握りしめる


今年も  2004/01/04

目を閉じて 風を感じよう
張りつめた透明な空気と
瑠璃色天鵞絨の滑らかな球体の表面の
シャボン色にかき混ぜた金平糖
その甘さを口に含んで 弾ける
目を閉じて 風を感じよう
ヘッドホンを通したデジタルの色彩に
僕の歌声をのせて
冷えた指先をつかまえて暖めた
瑠璃色天鵞絨の滑らかな球体の表面に
水蒸気の白いスプレー
シャボン色にかき混ぜた金平糖
その甘さを口に感じて 笑う
目を閉じて 風を感じよう
手を伸ばして 君を確かめよう
今が終わる
今から始まる
これからも よろしく