14. きせき



 君は今、何処にいるのでせうか。
 僕には其れを量る術はなく、君からの便りを待つだけです。
 一月と空けぬ君の便りは僕の机の隅で壁のように重なり、
 それだけの年月を感じてをります。
 君は今、何処にいるのでせうか。
 頻繁に届いていた君からの便りはふつりと、途絶えたまま。
 過去の君は何も語りはしなゐのです。
 故に、
 君が遠くに居る事を切に感じてをります。
 口に出してはならぬ事でせうが、淋しく過ごしてをります。
 もしや君は、風に囚われてゐるのかと。
 月に焦がれてゐるのかと。
 花に溺れてゐるのかと。
 魚が水を泳ぐように、君はこの世の中全てを渡つてゆくのでせう。
 さうして、君は此処から遠く、離れてゆくのでせう。
 君は今、何処にいるのでせうか。
 僕には其れを知る術はなく、只君からの頼りを待つだけです。
 其処にある景色は美しく、言葉すら奪うものなのでせうか。
 此の待つだけの日々に、少しばかり嫉妬してをります。
 少しばかり、ほんの少しばかり、
 君が憎らしくて、何より愛しいのです。
 又、君の好きな風を、月を、花を、言葉を、聴かせて下さい。
 さうして、出来る限り君の軌跡を辿りたいのです。
 君は今、何処にいるのでせうか。
 僕はずっと、此処にいます。
 此処にいます。
 此の一葉の手紙は、僕から君へ告げる最後の手紙です。
 君が居なくなつて七年目の明日が、
 晴れる事を願ひながら。

失踪して七年経つと死亡扱いになるらしい。
電話やインターネットが無い時代、唯一消息を知るものが手紙だけだとしたら、
きっと言葉にはもっと力があったのかなって思う。
今も言葉の力が滅びたとは思わないけれど、昔言霊と呼ばれたほどの力はもうないのかもしれない。それが言葉の乱れだったり、そんなものになるのかな。
略語や新語が増えていくけれど、そしてそれが私はあまり好きになれないこともあるけれど、やっぱり日本語が好きで、日本語で文章を書きたい。